所在地 | 大阪府吹田市川園町64-1 |
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TEL | 06-6381-5398 |
宗派 | 高野山真言宗 |
山号 | 紫雲山 |
本尊 | 聖観世音菩薩 |
創建 | 昭和12年(1937年)頃 |
開基 | 勝尾寺から派遣された僧侶 |
隆国寺は大阪府吹田市にある高野山真言宗の寺院で、昭和初期に創建された比較的新しいお寺です。昭和9年(1934年)9月の室戸台風により関西一帯で甚大な被害と多数の犠牲者が出たことから、その慰霊供養のため西国三十三所札所会によって現在の地に「関西風水害慰霊供養塔」が建立されたのが創建の契機となっています。当時、吹田市内でも豊津・岸部地区の小学校校舎が倒壊するなど大きな被害が発生しました。その慰霊塔を守り安居の場とするため、昭和12年(1937年)頃に箕面市の勝尾寺から派遣された僧侶が当地で開基して堂宇が整えられ、隆国寺が創建されました。山号は紫雲山で、同じ高野山真言宗に属する勝尾寺を本山とする末寺的な位置づけにあります。
隆国寺は市街地の中にありながら敷地が広く開放的で、ひとたび境内に入ると静寂に包まれる落ち着いた雰囲気のお寺です。境内には桜やツツジ、アジサイ、ボタンなど四季折々の草花が植えられ、春の花の季節には地域の寺院ながら見事な景観を楽しむことができます。とりわけ4月下旬頃には本堂周囲のツツジが色鮮やかに咲き誇り、初夏にはアジサイが彩りを添えます。昭和に建立された近代寺院ではありますが、山門(正門)や本堂は伝統的な真言宗寺院の様式に則った瓦屋根の堂宇で、歴史ある寺院にも劣らない風格を備えています。ご本尊には聖観世音菩薩(聖観音)が安置されており、その仏像は片足を下ろしもう一方の足を台座に乗せた半跏(はんか)姿勢で座す珍しい御姿です。全国的にも珍しいこのポーズには「地域の人々に何かあればすぐ立ち上がって助けに駆けつける」という意味合いが込められているといい、住民想いの寺らしさを感じさせます。
1930年代後半に建立された入母屋造り瓦葺きの本堂です。正面の向拝部分には左右一対のクロマツの古木が懸崖造り(けんがいづくり)に仕立てられており、その枝が参道上で中央に結ばれてアーチ状につながる独特の景観を作り出しています。本堂内部には本尊の聖観世音菩薩を祀る大きな厨子と荘厳な内陣が設けられています(通常は一般非公開)。堂前には昭和12年(1937年)銘の青銅製吊り灯籠が左右に立ち並び、寺の創建年代を今に伝えています。
境内入口の山門は入母屋造りの立派な薬医門形式で、両脇に塀を従えた構えになっています。門柱には寺号の「隆国寺」と山号の「紫雲山」が掲げられ、門前右手の石標には仏教の戒めである「不許葷酒入山門(くんしゅさんもんにいるをゆるさず)」と刻まれています。門をくぐると正面に石畳の参道越しに本堂が望め、門越しに堂宇を眺める伝統的な寺院景観を楽しめます。
本堂裏手に建立されている石塔(慰霊塔)で、1934年の室戸台風による風水害犠牲者供養のために建立されました。高さ数メートルほどの笠塔婆型の石塔で、正面に「関西風水害慰霊供養塔」と刻字されています。台座部には西国三十三所札所会による建立の由来が記されており、昭和初期の歴史を物語る慰霊碑となっています。現在も毎年命日には慰霊法要が営まれ、地域の人々が犠牲者に手を合わせています(※一般参列可)。
境内の一角には弘法大師(空海)の化身ともされる不動明王の石仏が安置されています。赤い前掛けをまとったお不動さんで、周囲をツツジの植え込みに囲まれるように立っています。初夏にはツツジの花陰に佇むお不動さんの姿を見ることができ、寺の守護神として信仰を集めています。近くには小さな鳥居を構えた祠もあり、稲荷社として地域の崇敬を受けています(※祠は山門入って左手方面に位置)。
1934年
(昭和9年)
吹田でも家屋倒壊など大きな被害が発生し、多数の死傷者を出す。同年、西国三十三所札所寺院会により犠牲者慰霊のための「関西風水害慰霊供養塔」が川園町の現在地に建立される。
1937年
(昭和12年)
箕面市・勝尾寺より派遣された僧侶(初代住職)により紫雲山隆国寺が開基。本堂など寺院伽藍が整備され、宗教法人として真言宗寺院の届け出がなされる。本尊聖観世音菩薩を勧請し安置。以後、毎年9月に慰霊法要を実施。
昭和戦後期
(平成期)
道のクロマツは成長に合わせ剪定され、美しい枝ぶりを維持(昭和末期に一部枯損したが治療・更新)。地域の墓地としても機能し、多くの参拝者・墓参者が訪れるようになる。
2018年
(平成30年)
吹田市観光ボランティアによる「まちあるき(正雀・安威川コース)」の立ち寄りスポットに選定され、歴史文化資産として紹介される。以降、地元の史跡探訪コースに組み込まれ、観光客にも寺の存在と歴史が周知されるようになる。