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紫雲寺しうんじ

奈良時代に行基が開いたと伝わり、戦国期に法忍が再興した浄土真宗寺院

所在地 大阪府吹田市山田東2-18-17
TEL 06-6877-0126
宗派 浄土真宗本願寺派(西本願寺)
山号 光明山
本尊 阿弥陀如来(浄土真宗のご本尊)
創建 (伝承)神亀年間(8世紀奈良時代)行基による創建;
(浄土真宗開基)永禄2年(1559年)に法忍が現在地に再興
文化財 「紫雲寺本堂内陣鳥獣図」(森狙仙筆、江戸時代後期) – 大阪府指定有形文化財(昭和47年指定)

森狙仙による鳥獣図や江戸初期の楽太鼓を伝え、地域の信仰と文化を守り続ける寺院

紫雲寺の歴史は古く、寺伝によれば奈良時代の神亀4年(727年)、高僧・行基が当地に「紫雲山永安寺」を開いたことに始まると伝えられます。その後中世に一時衰退しましたが、戦国時代の永禄2年(1559年)、永安寺第31世の法忍(ほうにん)が浄土真宗本願寺第十一世・顕如に帰依し、自らの所領であった山田城跡に浄土真宗の寺院として「紫雲寺」を再興しました。以来、当地の門徒衆の拠り所として発展し、近世には「光明山」の山号を称し、西本願寺の末寺となりました。

江戸時代後期には、大坂で活躍した絵師・森狙仙(1747–1821)が当寺本堂の内陣を彩る動植物画を手掛けました。狙仙は写実的な動物画、特に猿の絵で知られる絵師ですが、紫雲寺では彼の筆による色鮮やかな金碧障壁画や格天井画を見ることができます。本堂内陣の格天井には大小78面もの鳥獣図が淡彩で描かれ、鴛鴦(おしどり)や蓮池の図などが配され、壁面には極彩色の絵画が貼られています。落款には「狙仙」の署名が認められ、確かな作者証明となっています。

描かれている題材は、雉(きじ)、鴨(かも)、燕(つばめ)、鴉(からす)、鶴、鷹、オウム、孔雀など多彩な鳥類のほか、蛤(はまぐり)、兎、竜、鳳凰など珍しいものも含まれています。これらの内陣画は高い装飾性を誇り、1972年(昭和47年)に「紫雲寺本堂内陣鳥獣図」として大阪府指定有形文化財に指定されました。

千里丘陵一帯は古くから野鳥の楽園として知られ、江戸時代の紫雲寺周辺でも数多くの野鳥や猿が生息していた記録があります。狙仙はこの豊かな自然から着想を得て紫雲寺に滞在し、大作を残したとも伝えられており、歴史ロマンを感じさせる逸話として今日まで語り継がれています。

  • 本堂(ほんどう)

    現在の本堂は昭和45年(1970年)頃に再建された鉄筋コンクリート造の建物で、万博開催時期に合わせて整備されたと伝えられています。 内部の内陣には森狙仙による鳥獣の天井画と壁画が安置され、浄土真宗寺院では珍しい美術遺産となっています。 中央のご本尊は阿弥陀如来で、浄土真宗の教えの象徴として安置されています。普段は一般公開されていませんが、見学を希望する場合は事前申し込みが必要です。

  • 山門(さんもん)

    寺の正面入口に建つ門で、切妻造瓦葺きの質素な造りです。門前には「浄土真宗本願寺派 光明山紫雲寺」と刻まれた石標が立ち、歴史ある寺院の風格を漂わせています。 山門をくぐると静かな境内へと続き、周囲は昔ながらの街道沿いの町並みに溶け込んでおり、訪れる人を穏やかな雰囲気で迎えてくれます。

  • 境内と樹木

    境内は広くはありませんが、四季折々の趣を感じられる静かな空間です。特に注目は本堂脇にそびえるカスミザクラ(霞桜)の古木で、吹田市の保護樹木に指定されています。 春には淡紅色の花を咲かせ、歴史ある伽藍と調和した風情豊かな景観を楽しむことができます。

  • 年中行事

    紫雲寺では浄土真宗の寺院として、年間を通じて様々な仏事法要が営まれています。 特に1月の報恩講(親鸞聖人の御命日法要)は最も重要な行事で、門徒だけでなく地域の参詣者も迎えて盛大に勤まります。 また春秋の彼岸会やお盆法要など、四季折々に仏教行事が行われ、住職による法話や仏教文化に触れる機会も設けられています。 観光で訪れた際に日程が合えば、こうした行事に参加して浄土真宗の雰囲気を体感するのもおすすめです。

紫雲寺のあゆみ

  • 奈良時代
    (神亀年間頃)

    開創

    (伝)行基が山田の津雲台付近に「紫雲山永安寺」を開創。以後、平安時代にかけて寺院勢力が山田で栄える。

  • 室町時代後期
    (応仁年間)

    寺勢の衰退

    戦乱により周辺寺院が被害を受け、永安寺も衰退。戦国期には山田城が築かれ寺領は荒廃した。

  • 1559年
    (永禄2年)

    紫雲寺の再建

    永安寺第31世・法忍(竹中善祐)が西本願寺第11世顕如に帰依し、浄土真宗に改宗。所有地であった山田城跡に「光明山紫雲寺」を再建、真宗寺院としての歩みを開始。

  • 1626年頃
    (寛永3年)

    法会と雅楽

    西本願寺で法会に雅楽が取り入れられ、紫雲寺でも楽太鼓など楽器を用いた法要が行われるようになる。寺には江戸初期の楽太鼓が現存。

  • 1780年代

    森狙仙の障壁画

    江戸時代後期、動物画の名手・森狙仙が紫雲寺本堂内陣の障壁画・天井画を制作。多様な鳥獣図を描き残す。

  • 1970年
    (昭和45年)

    本堂再建

    老朽化した本堂を鉄筋コンクリート造で再建。万博開催に伴う周辺整備の一環として整備された。

  • 1972年
    (昭和47年)

    文化財指定

    森狙仙筆の「本堂内陣鳥獣図」82面が大阪府指定有形文化財に指定される。

  • 2010年代

    修繕と改修

    本堂の屋根や外装の修繕工事を実施。2013年頃に大規模改修が行われ、現在に至るまで地域の信仰と文化財を守り伝えている。

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