関西の寺院3,000の歴史を取材
寺院120件の情報を掲載(2025年10月13日現在)

ホーム > 大阪府 > 源福寺

源福寺げんぷくじ

江戸期に庄内村の門徒によって創建され、地域に根差して信仰を伝える浄土真宗本願寺派の寺院

所在地 大阪府豊中市庄内栄町1-24-17
電話 06-6332-2446
宗派 浄土真宗本願寺派(西本願寺)
本尊 阿弥陀如来(あみだにょらい)

「見守る古木」とともに、庄内の歴史と人々の暮らしに寄り添う豊中の念仏道場

源福寺の正確な創建年や開基(創立者)は不詳であるが、江戸時代初期までには当地に浄土真宗の道場が開かれ、後に寺院として整えられたと考えられている。 豊中市庄内一帯は中世以降、摂津国の低湿地帯を開拓して成立した村々が点在し、蓮如上人らによる布教を通じて浄土真宗が広まった地域である。 源福寺もその流れの中で庄内村の門徒(信徒)たちの拠り所として建立され、阿弥陀如来をご本尊とし、地域の信仰の中心として親しまれてきた。

明治時代の神仏分離や廃仏毀釈の動乱期にも源福寺は存続し、戦後の都市化で周囲が住宅地へと変貌した後も、寺域は昔ながらの静けさを保ち続けている。 昭和30年(1955年)には庄内町の豊中市編入に伴い、源福寺は豊中市の一寺院として位置づけられた。 平成期には、地域との結びつきを大切にしながら法要や墓所管理を継続し、境内の大樹が「見守る古木」として第1回豊中まちなみ市民賞を受賞するなど、市民に親しまれる寺院となっている。

  • 本堂

    寺の中心となる木造平屋建ての仏堂で、入母屋造瓦葺きの堂宇。正面には唐破風の向拝を構え、堂内には浄土真宗の荘厳が整えられている。 本尊・阿弥陀如来を安置する須弥壇が据えられ、欄間や柱には「下がり藤」の紋章や華鬘(けまん)が施される。 普段は非公開だが、法要時には門徒や参拝者が内陣で焼香を行うことができる。石畳には歴代住職や篤志家の寄進石が残り、寺の歴史を今に伝えている。

  • 山門(さんもん)

    境内入口に建つ切妻造または薬医門形式の簡素な門。柱上に瓦屋根を載せた端正な構えで、門柱には寺号「源福寺」が掲げられている。 門前右手には「不許葷酒入山門」と刻まれた石標が立ち、修行と戒律の象徴となっている。 門をくぐると正面に本堂が臨め、俗界から仏域へ入る象徴的な境界をなしている。

  • 鐘楼(しょうろう)

    境内の一角に建つ木造の鐘楼堂で、朱色の柱が印象的。内部には梵鐘が吊るされ、朝夕に鳴らされて時を知らせる。 現存する鐘は明治期の再鋳造と伝えられ、大晦日には「除夜の鐘」として地域住民にも開放される。 周囲の常緑樹と鐘楼の朱色が対比し、美しい風景を形づくっている。

  • 古木(こぼく)

    山門付近に立つ源福寺のシンボルツリー。幹回りは成人が両手で抱えても届かないほど太く、枝葉が空高く伸びる。 夏には豊かな緑陰を落とし参拝者を迎える天然の門のような存在で、「見守る古木」として第1回豊中まちなみ市民賞を受賞した。 地域住民からも親しまれ、ベンチに腰掛けて眺める人々の姿も見られる。

  • 石碑群と墓地

    本堂脇には歴代住職の顕彰碑や法華碑などが立ち並び、寺の歩みを物語る。 境内奥には寺院墓地が広がり、江戸時代から現代までの門徒の墓石が整然と並ぶ。 古い墓石の中には風化しながらも江戸期の戒名や年号を刻むものがあり、庄内の歴史を今に伝える貴重な史跡である。 墓地は永代供養墓・納骨堂の相談も受け付けており、静かな祈りの場として地域の人々に寄り添っている。

源福寺のあゆみ

  • 江戸時代前期(17世紀頃)

    浄土真宗道場としての創始

    庄内村に浄土真宗の道場として源福寺の起源となる堂宇が建立されたと伝えられる。地域の門徒の信仰の拠点として始まり、後に正式な寺院へと整備された。

  • 明治初期(1868年~)

    神仏分離令と存続

    明治初期の神仏分離令発令後も、浄土真宗本願寺派の寺院として存続。周辺の庄内村では複数の神社が合祀され庄内神社が創建される一方、源福寺は仏教寺院として地域に奉仕を続けた。

  • 昭和20年(1945年)

    太平洋戦争と戦後復興

    大阪空襲で庄内地区も被災したが、源福寺の伽藍は大きな損傷を免れたと伝えられる。戦後は復興とともに周辺の都市化が進み、寺は地域の精神的支柱として存続した。

  • 昭和30年(1955年)

    豊中市への編入

    豊能郡庄内町が豊中市に編入され、源福寺も行政区分上豊中市の寺院となる。以後、市内の文化・景観資源としても注目されるようになった。

  • 平成初期(1990年代)

    境内整備と再開発期の修繕

    庄内地区の市街地再開発に合わせて境内の整備を実施。平成元年前後には山門や本堂の修繕が行われ、寺観の維持と景観向上が図られた。

  • 平成21年(2009年)

    「見守る古木」表彰

    第1回豊中まちなみ市民賞で、源福寺境内の古木が「見守る古木」として表彰。地域景観資産として再評価され、市民に親しまれる存在となる。

  • 令和時代(~現在)

    地域に開かれた寺としての活動

    現在も年中行事や永代供養、月例の座談会(毎月15日14時、偶数月と12月)を開催。門徒以外も参加できる開かれた寺として、地域交流と信仰継承の役割を担っている。

← 一覧に戻る