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浄円寺じょうえんじ

箕面に500年続く浄土真宗の古刹

所在地 大阪府箕面市半町2-9-5
山号 赤井山
宗派 浄土真宗大谷派(東本願寺)
本尊 阿弥陀如来(伝・行基菩薩作)
創建 明応5年(1496年)
開基 赤井左近良時(法名:良恩)
寺宝 蓮如上人直筆の名号(南無阿弥陀仏)
文化財 木造天部立像(平安時代作・大阪市指定文化財)
HP akaizan-joenji.jp

名号と帝釈天像が語る西国街道の門徒寺・浄円寺

浄円寺は戦国時代の創建以来、北摂・箕面の地で浄土真宗の信仰を伝えてきた寺院である。開基となった赤井左近良時は、山城国出身の国学者で、世の無常を見つめ浄土の教えを求めていたと伝わる。良時は本願寺第8世・蓮如上人を箕面に招いて教えを受け、その場で剃髪して法名「良恩」を授かり、明応5年(1496年)に阿弥陀如来を本尊とする念仏道場を開いた。蓮如上人から賜った直筆の南無阿弥陀仏の名号は別壇に安置され、道場は「浄円寺」と命名されたという。以後、歴代住職と門徒により500年以上にわたり寺が護持され、当地で途切れることなく親鸞聖人の教えが伝えられている。

浄円寺の建つ箕面・萱野地域は西国街道沿いに位置し、江戸時代まで旅人や門徒の往来で賑わった土地柄である。寺には開創当初より本尊として阿弥陀如来像が安置されてきたが、この像は奈良時代の行基菩薩の作と伝えられ、開基の良時が代々家に伝わる仏像として礼拝していたものだった。また浄円寺は貴重な仏教美術品を所蔵しており、中でも本堂に安置される木造天部立像は平安時代(11世紀)頃の作と推定される古像で、大阪市の有形文化財に指定されている。甲冑を身に着けた立ち姿から帝釈天像と考えられるこの仏像は、もとは大阪市内の寺院に伝わったものが縁あって浄円寺に戻り、現在は寺宝として大切に祀られている。こうした歴史的遺産に触れることができる点も、浄円寺の大きな魅力と言える。

  • 境内

    浄円寺の境内は現在、阪急桜井駅から徒歩約8分の閑静な住宅街に位置している。寺門を入ると正面に近代的な本堂があり、内部には本尊の阿弥陀如来像とともに、蓮如上人由来の名号や平安古仏の帝釈天立像などが安置されている。普段は静かな伽藍だが、毎年行われる法要や行事の際には地元の参拝者で賑わう。特に大晦日には境内の鐘楼で除夜の鐘が108回撞かれ、真夜中の修正会(新年の法要)まで多くの人々が訪れる。参拝者は誰でも鐘を撞くことができ、新年を迎える厳かなひとときを共有できるのが特徴である。春にはお釈迦様の誕生を祝う花まつりが4月初旬に開催され、本堂前に花御堂をしつらえて誕生仏に甘茶を注ぎ参拝する伝統行事が行われる。地元の子どもたちにも仏教行事に親しんでもらおうと「こども花まつり」として催され、初めてお寺にお参りする良い機会にもなっている。このように浄円寺の境内は、歴史的遺産が安置された信仰の場であると同時に、地域に開かれた交流の場としての役割も果たしている。

浄円寺のあゆみ

  • 1496年
    (明応5年)

    浄円寺の創建

    赤井左近良時が蓮如上人から浄土真宗の教えを受け、箕面・萱野に念仏道場「浄円寺」を創建。本尊の阿弥陀如来像を安置し、蓮如上人より賜った「南無阿弥陀仏」の名号を別壇に奉安。

  • 1534年
    (天文3年)

    開基・赤井良時の示寂

    開基の良時(法名:良恩)が示寂。以後、歴代住職と門徒により寺が護持され、箕面の地で教えが伝えられる。

  • 江戸時代

    周辺門徒の拠点寺院として存続

    浄円寺は浄土真宗本願寺派(のち真宗大谷派)に属し、周辺門徒の拠点寺院として存続。西国街道沿いの寺として地域に定着する。

  • 1868年
    (明治元年)

    神仏分離令を乗り越える

    神仏分離令の際も寺号を存続。以降、近代を通じて浄土真宗寺院として地域の信仰を支える。

  • 20世紀後半

    都市化に対応した寺院活動

    都市化の進行する箕面市において、門信徒の増減や周辺開発に対応しながら寺院活動を継続。

  • 2010年代

    本堂・庫裏の改築と移転整備

    本堂・庫裏の改築および現在地への移転整備を実施(阪急桜井駅西側に堂宇を新築)。地域の公民館的役割も果たす開かれた寺づくりを進める。

  • 2016年
    (平成28年)

    箕面市仏教会会長に就任

    現住職が箕面市仏教会の会長に就任。以降、他寺院と連携し地域の仏教行事や社会活動にも積極的に参加。

  • 2024年
    (令和6年)

    木造帝釈天立像が大阪市指定有形文化財に

    本堂に伝わる木造帝釈天立像(天部立像)が大阪市指定有形文化財に指定される。平安時代作と推定される貴重な古仏であり、寺宝として公開されたことで信仰の対象だけでなく文化財としても脚光を浴びる。

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