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法清寺ほうせいじ

梅田の繁華街に静かに佇む、酒乱封じの伝説を伝える日蓮宗寺院

所在地 大阪府大阪市北区曾根崎1-2-19
宗派 日蓮宗
山号 光智山(こうちざん)

酒乱封じの伝説を今に伝える、梅田に佇む日蓮宗寺院・法清寺

法清寺(ほうせいじ)は、大阪・梅田の繁華街にひっそりと佇む日蓮宗寺院で、山号を「光智山」と称します。創建年代は明確ではありませんが、明治44年(1911年)に本堂を含む伽藍が再建され、この建物は大阪大空襲の戦災を免れて現存する貴重な近代寺院建築です。境内には江戸中期の遊女「かしく」の墓があり、その生涯と逸話が当寺を特徴づけています。かしくは酒により人格が変わる悪癖から兄を刺殺し、寛延2年(1749年)に処刑されましたが、処刑直前に油揚げの油で髪を整え裸馬に乗った逸話が広く語られ、浄瑠璃や歌舞伎に取り上げられて一世を風靡しました。

伝承によれば、かしくは最期の時に「死後は酒で苦しむ人々を守る霊となろう」と誓ったとされ、後に「墓石の粉を煎じて飲めば酒乱が治る」といった噂が広まり、人々が禁酒・断酒祈願のために多く参拝するようになりました。この背景から法清寺は“酒乱封じ・禁酒祈願の寺”として知られ、現在でも独自の信仰を集めています。寺は通常非公開ながら、その歴史と伝承が評価され、大阪市北区の「名所八十八景」にも選ばれています。毎年3月18日のかしくの命日には「かしく祭」が催され、法要ののち上方舞や邦楽が奉納されるなど、誰でも参加できる春の風物詩として親しまれています。

  • 本堂

    法清寺の本堂は木造瓦葺きの伝統的な意匠を備える仏堂で、現在の建物は明治期の再建当時のものとされます。 大正・昭和期の市街地戦災を免れた数少ない近代以前の寺院建築として貴重で、梅田の高層ビル群に囲まれながらも往時の風格を静かに伝えています。 正面には寺号と山号を刻んだ石柱が立ち、控えめながら格式を感じさせる門構えが印象的です。

  • かしくの墓と小堂

    境内には、酒乱から兄殺しに至り非業の最期を遂げた江戸中期の遊女・かしくの墓があります。 墓石は参拝者が削り取る習慣があったため細く小さくなり、現在は損壊を防ぐため鞘堂に納められ、 その全体を覆う小堂が建てられています。堂内にはかしくの供養塔と祭壇が安置され、 彼女の霊を慰める場として大切に護持されています。

  • 禁酒祈願のしゃもじ奉納

    「かしく堂」とも呼ばれるこの小堂には、無数のしゃもじ(杓文字)が吊るされており、強烈な印象を与えます。 これらは酒乱封じ・禁酒祈願を願う人々が絵馬代わりに奉納したもので、酒に悩む人が願いを書き込んで供える独自の信仰風景です。 しゃもじ奉納の由来は「悪酔いを掬い取る」という語呂合わせや民間俗信にちなむとされ、新しいしゃもじが日々奉納される様子から、 現在も多くの参拝者が酒害除けを祈願していることがうかがえます。

  • かしくの歌碑

    小堂のそばには、かしくにまつわる和歌を刻む石碑(歌碑)が建てられています。 その歌は処刑後に詠まれた追悼歌と伝えられ、酒に翻弄された人生への戒めと、断酒の大切さを静かに物語ります。 都会の喧騒の中に残るこの歌碑は、多くの訪問者が足を止め読み入るスポットとなっており、悲劇の伝承を今に伝えています。

法清寺のあゆみ

  • 創建不明

    法清寺の創建(詳細不詳)

    創建年代や開基に関する確かな史料は残らないが、江戸時代以前には寺院として成立していたと考えられる。

  • 1749年
    (寛延2年)

    遊女かしく処刑・墓が建立される

    酒乱による兄殺しの罪で処刑された遊女・かしくの墓が境内に建てられ、後世に語り継がれる「かしく伝説」の始まりとなる。

  • 江戸後期

    禁酒・酒乱封じの参詣が増加

    「墓石の粉を煎じて飲めば酒乱が治る」という民間信仰が広まり、禁酒祈願の参詣者が増加。法清寺は“酒乱封じの寺”として知られるようになる。

  • 1911年
    (明治44年)

    本堂など寺伽藍を再建

    本堂を含む主要堂宇が再建され、現在見られる近代以前の寺院建築の基礎が形づくられる。

  • 1945年
    (昭和20年)

    大阪大空襲を免れ堂宇が現存

    大阪大空襲による市街地壊滅の中で戦火を免れ、再建当時の本堂が現存。梅田周辺で数少ない戦前建築寺院となる。

  • 毎年3月18日

    「かしく祭」の開催

    かしくの命日に合わせ法要が営まれ、上方舞や邦楽などの奉納芸能が行われる。一般参列も可能で、春の風物詩として親しまれる。

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