所在地 | 大阪府箕面市粟生間谷東5-30-19 |
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宗派 | 浄土宗(知恩院派) |
山号 | 光明山 |
院号 | 極楽院 |
寺号 | 法泉寺 |
本尊 | 阿弥陀如来 |
創建 | 建保元年(1213年) |
開基(創立者) | 身誉上人 |
主な文化財・札所等 | 庄屋夫婦坐像、句碑(市指定文化財・書跡所蔵) |
法泉寺は大阪北部・箕面市の静かな山間に佇む浄土宗の古刹です。平安時代、当地には真言密教の道場「阿珎陀院」があり栄えていましたが、火災で荒廃しました。その後、鎌倉時代の建保元年(1213年)に浄土宗の僧・身誉上人によって再興され、山号を「光明山」、院号を「極楽院」と称する寺院として創建されました。本尊には阿弥陀如来が安置され、以降地域の信仰を集めてきました。室町・江戸期を通じて庶民に親しまれ、境内に伝わる民話「守り隠れさん」にもその姿が描かれています。明治期の廃仏毀釈など困難も乗り越え、大正2年(1913年)に本堂が再建され現在に至ります。
堂は阿弥陀如来をご本尊とする法泉寺の中心堂宇で、大正2年(1913年)に再建された木造建築です。落ち着いた木目の外観と瓦屋根を持つ本堂前には、美しく刈り込まれた低木や石畳が配され、静寂な雰囲気を醸し出しています。内部にはご本尊の阿弥陀如来像のほか、地域の伝説に関わる観音菩薩・地蔵菩薩の仏像が安置されています。本堂脇には歴代住職による句碑も建てられており、「見えない根たちのねがいがこもってあのような美しい花となる」という第20世住職の歌が石に刻まれています。この句は地中の根(寺を支えた人々)の想いが美しい花(歴史や文化)となって現れることを詠んだもので、法泉寺の長い歩みと重ね合わせて味わえます。
山門(入口)は光明山法泉寺の表玄関にあたり、シンプルながら風格のある四脚門です。門越しに覗く本堂と庭木の景色は額縁絵のようで、参拝者を静かな聖域へと誘います。門の扁額(寺号額)には達筆で「法泉寺」と記され、寺の歴史を伝える風合いが感じられます。山門を入って左手には小さな伏見稲荷社が祀られており、朱色の鳥居と社がひっそりと建っています。これは寺院守護や五穀豊穣を祈るために勧請されたもので、境内の一角に神仏習合の名残を留めています。
鐘楼(しょうろう)も境内の見どころの一つです。木造入母屋造りの小楼閣で、堂々とした梵鐘が吊るされています。除夜の鐘などの行事の際には、この鐘の澄んだ音色が静かな谷間に響き渡り、新年の訪れを告げます。普段は柵越しに眺める形ですが、その古風な佇まいは写真スポットとしても人気があります。
庭園と巨木も法泉寺ならではの魅力です。境内中央には石畳が巡らされ、その脇に四季折々の植物が配置された日本庭園風の空間が広がります。特に目を引くのが先述のクロマツ(黒松)で、推定400年の歳月を経た幹から力強く枝を張り出しています。青々と茂る松葉と曲線を描く枝振りは年月を感じさせ、歴史の生き証人として訪れる人々を見守ってきたようにも思えます。その傍らには艶やかな常緑樹モッコクが丸く刈り込まれ、庭のアクセントになっています。季節によってはツツジやサツキなども花を咲かせ、色彩を添えます。美しい庭と建物の調和した境内風景は、箕面市指定の「みどりの名所」としても知られ、訪れた観光客の心を和ませてくれるでしょう。
10世紀
(平安時代中期)
藤原氏ゆかりの武将・源満仲公の時代(913~997年)、現在の法泉寺の地に真言宗の道場「阿珎陀院(あちんだいん)」が創建された。修験の行場として栄えたが、火災で堂宇を焼失し一時荒廃する。
1213年
(建保元年・鎌倉時代)
浄土宗の僧・身誉上人が、当地に残されていた阿弥陀仏の石仏の霊験を感じ寺院を再興。これが現在の法泉寺の開山とされ、浄土宗知恩院派の一寺として再スタートを切った。山号を「光明山」、寺号を「法泉寺」と定め、阿弥陀如来をご本尊とした。
室町~江戸時代
法泉寺は庶民の菩提寺として地域に根付き、江戸中期には「守り隠れさん」の伝説が生まれる。悲劇の庄屋夫妻や子守娘を村人たちが密かに弔い、その供養の場として機能したとされる。現在も夫妻の位牌が祀られている。
明治時代
維新期の廃仏毀釈の荒波の中でも地域の厚い信仰に守られ存続。村で守られてきた観音菩薩像(胎内仏に庄屋夫妻像)と地蔵菩薩像が法泉寺へ移され、秘仏として保存される。
1913年
(大正2年)
老朽化した本堂や主要伽藍を再建。現在の本堂はこのときのもので、古式意匠を継承しながら整えられた。以後、庫裏や諸施設も整備され境内景観が整った。
昭和~平成時代
昭和23年(1948年)、境内隣接地に法泉寺保育園を開設し、幼児教育を通じて地域社会と結びついた。平成以降は文化財調査に協力し、庄屋夫婦坐像を納めた観音・地蔵菩薩像が全国的に珍しい信仰遺産として注目。平成31年(2019年)には法泉寺所蔵の古文書が箕面市の有形文化財(書跡)に指定された。
令和時代
現在も静かな霊域として荘厳さを保ちつつ、地域や参拝者に開かれた寺として歩みを続けている。伝説の秘仏・庄屋夫婦坐像や樹齢400年のクロマツなどが貴重な観光資源となり、事前予約制の特別拝観も検討。四季折々の行事や紅葉期のライトアップも催され、人々に安らぎを与え続けている。