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永照寺えいしょうじ

奈良時代の行基創建伝承を持ち、蓮如上人の教化によって再興された高城山 永照寺

所在地 大阪府豊中市利倉2-10-10
電話 06-6863-6396
宗派 浄土真宗本願寺派(西本願寺)

蔭山家が代々住職を務め、阿弥陀信仰と地域文化を今に伝える浄土真宗本願寺派の古刹

永照寺(えいしょうじ)は大阪府豊中市利倉にある浄土真宗本願寺派(西本願寺)の寺院で、山号を「高城山(こうじょうざん)」と称する。 寺伝によれば、奈良時代に行基菩薩が当地に開基し、「高城山」と号する寺院を創建したのが始まりとされる。 もとは真言宗の道場として開かれたと伝えられるが、しばらく歴史の表舞台には登場せず、中世に至って再び脚光を浴びることとなる。

明応6年(1497年)、当地の豪族・蔭山作右衛門の長男・作之進(法名:祐西)が本願寺第8世・蓮如上人に帰依し、寺を浄土真宗に改宗して再興。 この際、寺号を現在の「永照寺」と改め、祐西が中興開山として永照寺の基礎を築いたと伝わる。 永照寺ではこの明応年間の再興を重要な節目と位置づけ、「since1497」と銘打って寺の歴史を語り継いでいる。

以後、永照寺は本山・西本願寺を宗派の拠り所とし、蔭山家が代々住職を務めて近世・近代を通して寺門を守り続けてきた。 現在も浄土真宗本願寺派の寺院として地域に根差し、古代から連なる信仰の系譜と蓮如上人以来の教えを今に伝えている。

  • 本堂(阿弥陀堂)

    永照寺の本堂は、瓦屋根をいただく木造平屋建ての仏堂である。内部には本尊・阿弥陀如来坐像が安置され、内陣正面には金色に輝く阿弥陀如来と荘厳具が整えられている。 近代以降に再建されたものの、畳敷きの広間や伝統的な厨子が配置され、厳かな空間を演出している。報恩講や法要の際には参拝者も本堂に参列でき、浄土真宗の念仏の教えが今も息づく中心施設である。

  • 山門(寺門)

    境内の入口に建つ小さな山門は、切妻造風の木造門で両脇に袖塀を備える。風合いのある木材が時の重みを感じさせ、歴史ある佇まいを保っている。 山門をくぐると石畳の参道が本堂へと延び、静寂と清らかな空気に包まれる。扁額には「高城山永照寺」と書かれ、訪れる人々を温かく迎える。 普段は門扉が開かれており、誰でも自由に参拝できる穏やかな雰囲気が魅力である。

  • 鐘楼堂と梵鐘

    境内の一角に建つ小さな入母屋造の鐘楼堂は、江戸時代に鋳造された由緒ある梵鐘を吊るす。木造の素朴な造りながら、柱や梁には長年の風雨に耐えた風格が漂う。 毎年大晦日には「除夜の鐘」が行われ、近隣の参拝者にも開放される。23時45分頃から0時半頃にかけて撞かれる鐘の音は、澄み切った音色で冬の夜空に響き渡り、 一年の厄を祓い新年を迎える象徴的な行事として地域に親しまれている。

  • その他の見どころ

    本堂前の石畳沿いには歴代住職の供養塔や石仏が並び、蔭山家歴代の法名碑や墓石が往時を物語る。 境内は小規模ながら手入れの行き届いた植栽と砂利敷きの庭を備え、訪れる人々に安らぎを与える空間となっている。 初夏には裏手を流れる小川周辺でホタルが飛び交い、「蛍の里」と呼ばれる名所として知られている。 豊中市主催の「ほたるの夕べ」観賞会も開かれ、夜には幻想的な光景が広がり、古寺の風情と調和した幽玄の世界を楽しむことができる。

永照寺のあゆみ

  • 奈良時代(8世紀)

    高城山の創建【伝承】

    行基菩薩が当地にて寺院を創建したと伝わる。寺号を「高城山」と称し、本尊を祀る堂宇を建立。これが永照寺の前身とされる。

  • 平安時代後期

    阿弥陀如来坐像の造立

    寺に伝わる木造阿弥陀如来坐像がこの頃に造立されたと推定される。現在、この像は豊中市指定文化財に指定されている。

  • 明応6年(1497年)

    浄土真宗への改宗と再興

    豪族・蔭山祐西(作之進)が本願寺第8世・蓮如上人の教化を受け、真言宗から浄土真宗に改宗。寺号を「永照寺」と改め、祐西が中興開山となる。

  • 天明6年(1786年)

    梵鐘の鋳造

    江戸時代中期、永照寺の梵鐘が鋳造される。この梵鐘は現在も現存し、豊中市指定有形文化財として保存されている。

  • 昭和~平成期

    伽藍整備と地域活動

    本堂の改修や伽藍整備を行い、地域教育や文化活動にも注力。伝統的法要に加え、寺報の発行や講座・イベントを通じて開かれた寺院として活動を展開。

  • 令和期

    地域に開かれた現代寺院へ

    現住職・蔭山正信師のもと、永照寺は地域に開かれた寺として精力的に活動。報恩講などの伝統行事に加え、ヨガ教室や子ども向けワークショップなども開催し、現代に息づく信仰と交流の場を提供している。

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