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忍法寺にんぽうじ

天文6年(1537年)創建、服部の地に力石伝説を伝える浄土真宗本願寺派の古刹

所在地 大阪府豊中市服部西町3丁目13-24
宗派 浄土真宗本願寺派(西本願寺)
山号 月光山(がっこうざん)
本尊 阿弥陀如来
創建 天文6年(1537年)
開基 西岡与八(法名:念玄)
アクセス 阪急宝塚本線「服部天神駅」から徒歩約10分(服部天神宮の北西約500m)

西岡与八(念玄)により開かれ、地域の信仰と文化を500年にわたり守り続ける月光山 忍法寺

忍法寺(にんぽうじ)は、大阪府豊中市服部地区にある浄土真宗本願寺派(西本願寺系)の寺院である。 戦国時代の天文6年(1537年)、本願寺証如に帰依した西岡与八(法名:念玄)によって創建された。 寺号「忍法寺」は一見“忍術”を連想させるが、実際には忍者とは無関係で、「忍耐と法(仏法)」を意味する名である。 山号は月光山(がっこうざん)、本尊には阿弥陀如来を安置する。 創建当初は「穂積の西の寺」と呼ばれ、地域の人々の信仰の場として栄えた後、本願寺より正式に「忍法寺」の寺号を賜ったと伝えられている。

500年近い歴史をもつこの寺は、豊中の服部地域における浄土真宗信仰の拠点として発展してきた。 境内には地域の人々の信仰と生活の記憶が息づき、伝説として「力石(ちからいし)」にまつわる話も伝わっている。 それは江戸時代、若者たちがこの寺の境内で力比べをしたとされる大石で、地域の祭礼文化と深く結びついた貴重な民俗遺産である。 現在も寺は地元の人々の心の拠り所であり、季節の法要や行事を通じて長い歴史の息吹を感じることができる。

  • 力石(ちからいし)

    忍法寺の門前に置かれた名物「力石」は、米俵のように丸みを帯びた大きな石で、かつて若者たちが力比べに使ったと伝えられている。 特に地元出身の力士・初岩がこの石を持ち上げたという逸話が残り、力自慢の象徴として語り継がれてきた。 現在では参拝者が自由に触れることができ、その重量感と歴史を肌で感じることができる。

  • 本堂

    木造瓦葺きの本堂は、浄土真宗寺院らしい質実な造りであり、内部には阿弥陀如来像が安置されている。 金色に輝く内陣と荘厳な仏具が整えられ、静かな祈りの場として地域の人々に親しまれている。 通常は非公開だが、法要の際には参拝者も本堂内でお勤めに参加できる。

  • 石碑・仏塔

    境内には歴代住職の石碑や仏塔が整然と配置されており、長い歴史の重みを感じさせる空間となっている。 参道脇の石灯籠や石仏もまた、地域信仰の歴史を今に伝える貴重な遺構である。

  • 力石まんじゅう

    忍法寺の「力石」にちなんだオリジナル菓子「力石まんじゅう」は、地元の和菓子店「由喜(よき)」とのコラボレーションによって誕生した。 力石の形と伝承にちなんで作られたまんじゅうで、白色の酒まんじゅうと茶色の蕎麦まんじゅうの二種類がある。 境内の行事や法要の際に振る舞われることもあり、訪れた際には近隣の店舗で購入して味わうのもおすすめ。

  • 境内の雰囲気

    境内は広くはないが、木々や石畳が整えられた落ち着いた佇まいで、訪れる人に穏やかな時間を与える。 春には新緑が美しく、夏には蝉の声が響き、四季折々の風情が感じられる。 忍法寺は力石とともに地域の歴史と文化を伝える「服部の古刹」として、今も静かに人々を迎えている。

忍法寺のあゆみ

  • 1537年(天文6年)

    忍法寺の創建

    西岡与八(法名・念玄)が本願寺証如の教化を受け、有志とともに忍法寺を創建。 当初は「穂積の西の寺」と呼ばれていたが、地域の人々の信仰を集める場として発展していった。

  • 江戸時代初期

    寺号「忍法寺」の公称

    後に本山より正式に「忍法寺」の寺号が与えられ、山号を「月光山」と定める。 穂積村(現在の豊中市服部地域)の菩提寺として村人の信仰を集め、住吉神社と並ぶ地域の信仰拠点として栄えた。

  • 明治時代

    神仏分離と地域信仰の継続

    神仏分離令による影響を受けつつも、浄土真宗寺院として存続。 明治22年(1889年)の町村合併により穂積村が豊中町に編入された後も、地域の人々の心の拠り所としての役割を果たし続けた。

  • 平成時代(2000年代)

    地域文化遺産としての再評価

    2008年、豊中市教育委員会発行『とよなか歴史・文化財ガイドブック』において紹介されるなど、地域の文化遺産として再評価が進む。 忍法寺の歴史と「力石伝説」は、豊中市の歴史的資産の一部として位置づけられるようになった。

  • 2018年(平成30年)

    力石まんじゅうの誕生

    門前の力石伝説にちなんで、地元の和菓子店「由喜(よき)」と協力し「力石まんじゅう」を発売。 白い酒まんじゅうと茶色の蕎麦まんじゅうの2種類が作られ、寺の行事や報恩講の際に参拝者へ振る舞われるなど、地域活性化の一端を担っている。

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