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常光円満寺じょうこうえんまんじ

天平7年創建、聖観音を本尊とする高野山真言宗の古刹

所在地 大阪府吹田市元町28-13
アクセス JR京都線「吹田駅」・阪急千里線「吹田駅」より徒歩5分
電話 06-6381-0182
HP enmanji.com
宗派 高野山真言宗
山号 慧日山
本尊 聖観音菩薩(秘仏)
創建 天平7年(735年)
開基 行基菩薩
文化財 宝篋印塔(1801年建立、市指定文化財)をはじめ、江戸時代の常光円満寺絵図・古文書、木造観音菩薩立像(秘仏)など多数の文化財を所蔵

足利将軍家の祈願所として栄え、戦火や災禍を越えて復興し、涅槃堂などで今も人々に開かれる寺院

常光円満寺の縁起によれば、聖武天皇の御代・天平7年(735年)、行基菩薩が「吹田に聖なる香木がある」という牛頭天王のお告げを夢で受け、当地を訪れました。白砂青松の浜辺に流れ着いた霊木から聖観音菩薩像を刻み、本尊として安置したお堂を建てたのが寺の起源とされています。このお堂は「浜の堂」と呼ばれ、行基の布教道場として信仰を集めました。その後、治承2年(1178年)に隣村の円満寺から仏像を移し、寺号を合わせて「常光円満寺」と改められました。

鎌倉時代から室町時代にかけては最盛期を迎え、七堂伽藍と13の塔頭を有する大寺院へと発展しました。応安2年(1369年)、足利義満が帰依して以降は足利将軍家の菩提寺として庇護を受け、寺紋に足利家の引両紋を許されました。さらに吹田氏からも広大な寺領を寄進され、隆盛を極めましたが、応仁の乱で戦火に巻き込まれ伽藍は焼失、寺領も失われました。

江戸時代の寛文11年(1671年)、教範和尚により再建が進められ、その後も修復が重ねられました。昭和56年(1981年)には現在の本堂が再建され、平成29年(2017年)には全長約8mの巨大な釈迦涅槃像を安置する涅槃堂が新設されました。伝統を受け継ぎつつ、現代の参拝者にも開かれた魅力ある寺院として発展を続けています。

  • 本堂

    境内の中心に建つ本堂は、本尊・聖観世音菩薩(秘仏)を安置する「すべての中心となるお堂」。隣には赤い前掛けを着けた地蔵菩薩を祀る地蔵堂があり、清浄な堂内に慈悲が満ちています。

  • 涅槃堂

    2017年に新設された堂内には、巨大な金色の釈迦涅槃仏が安置されています。「幸福を授ける涅槃仏」として信仰され、参拝者は仏足に触れたり折り鶴を奉納したりできます。写真撮影が許可された珍しいお堂で、花祭りには特別なイベントも行われます。

  • 一願観音

    西門上部に安置される観音像で、「一つだけ願いを叶えてくださる観音様」。高所に奉安され、上を向いて祈ることで願いが叶いやすいと伝わります。

  • 水かけ六地蔵

    本堂脇に並ぶ六体の地蔵菩薩。六道それぞれで衆生を救済してくださるお地蔵様で、参拝者は水をかけて供養します。

  • 多彩な地蔵尊

    癒しのなで地蔵、良縁や家内和合のふれあい地蔵、開運をもたらすあゆみ地蔵など、多様なお地蔵様が境内各所に祀られ、人々の心を和ませています。

  • 鐘楼堂

    戦時中に金属供出された梵鐘が戦後に戻り「厄除けの鐘」として大切にされています。毎年大晦日には参拝者が除夜の鐘を撞き、無病息災を祈ります。

  • 宿坊・延命閣

    境内に建つ鉄筋4階建ての宿坊施設。大広間は冠婚葬祭や法要に使われ、かつては合宿や宿泊にも利用されました(現在は宿泊休止中)。

  • 写経会

    毎月21日に本堂で開催。僧侶の指導のもと初心者でも参加でき、静寂の中で心を落ち着ける体験は観光客にも人気です。

常光円満寺のあゆみ

  • 735年
    (天平7年)

    創建

    行基が吹田の浜辺で霊木を得て聖観音像を彫り、「浜の堂」を建立。常光円満寺の起源とされる。

  • 1178年
    (治承2年)

    寺号改称

    隣村の円満寺から本尊を遷座し、寺号を合わせて「常光円満寺」と改称。

  • 1369年
    (応安2年)

    足利将軍家の祈願所

    室町幕府第3代将軍・足利義満が当寺を祈願所と定め、以後は足利将軍家の菩提寺として繁栄。

  • 1429年頃
    (永享年間)

    吹田氏からの寄進

    吹田氏(吹田河内守重通)より寺領の寄進を受け、寺勢が隆盛を極める。

  • 1467年
    (応仁元年)

    応仁の乱

    戦火により伽藍が全焼し、寺領荘園の大半を失う。

  • 1671年
    (寛文11年)

    中興再建

    教範和尚が荒廃していた寺を中興。本堂など主要伽藍を再建。

  • 1981年
    (昭和56年)

    本堂改築

    老朽化した本堂を全面改築。昭和の大修復工事完了、新本堂が落成。

  • 2017年
    (平成29年)

    涅槃堂新設

    境内に涅槃堂を建立し、黄金の釈迦涅槃仏を奉安。吹田市の新たな名所として親しまれている。

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