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太春寺たいしゅんじ

天正創建の曹洞宗古刹――仏足石と放生観音が迎える幸福山寂照院

所在地 大阪府箕面市如意谷2-10-63
TEL 072-722-4113
山号 幸福山
宗派 曹洞宗
本尊 釈迦如来
創建 天正7年(1579年)
別称 太春寺(たいしゅんじ)
HP http://taisyunji.jp/

ペット供養の放生観音と銭屋惣兵衛ゆかりの歴史が息づく“猫寺”・太春寺

太春寺は安土桃山時代の天正7年(1579年)に箕面の地で開創された寺院です。開山当初より曹洞宗の寺院として福井県の大本山永平寺の流れを汲み、能登の總持寺から庇護を受けて発展してきた由緒あるお寺です。時代の変遷に伴って寺域や所在が整備・変革され、現在の如意谷の地に至っています。 この寺院には歴史的な魅力と特色ある文化財が数多くあります。本尊の釈迦如来像を安置する本堂は厳かな雰囲気で、外からも御本尊のお姿を拝むことができます。江戸時代には豪商・銭屋惣兵衛の菩提寺ともなり、境内には彼の墓所が置かれ、また当地の名族である如意谷氏の位牌も安置されています。さらに寺の正面には「幸福開運仏足石」と呼ばれる珍しい佛足石が据えられており、一歩ずつ幸運を運び、苦難や災厄を踏み固めるご利益があるとされ多くの参拝者が礼拝しています。また、このお寺はペット供養の霊場としても知られており、放生観音と呼ばれる動物慰霊の観音菩薩像を祀っていることから「猫寺」の愛称でも親しまれています。こうした歴史的背景とユニークな信仰対象が融合した太春寺は、歴史愛好家のみならず、文化財や建築に関心のある人々にも見応えのあるスポットとなっています。

  • 境内

    境内に入るとまず目に入るのが立派な山門です。山門の額にはこの寺の山号である「幸福山」の文字が掲げられており、その名のとおり穏やかな幸せを感じさせる雰囲気が漂います。門をくぐると正面に本堂があり、堂内には本尊の釈迦如来像が安置されています。ガラス越しに拝顔できるお釈迦様は優美で、訪れた人々は手を合わせて静かに祈りを捧げます。本堂の脇には庫裡(くり)など僧堂の建物が配置され、寺務所も兼ねて地域の檀信徒を暖かく迎えています。 本堂周辺には見どころが点在しています。正面玄関脇には先述の仏足石が据えられ、右足跡を型どった石に触れてそのご利益を願うことができます。仏足石の隣には摩尼輪(マニ車)と呼ばれる輪宝が置かれており、参拝者が回転させて祈願できるようになっています(チベット仏教のマニ車に倣ったものです)。

    さらに境内には放生観音の石像が安置されており、小動物やペットの霊を供養したい人々がこの観音様に手を合わせています。この放生観音は「この世でペットの霊を救うために現れた唯一の観音様」ともいわれ、ペットを亡くした方々から厚い信仰を集めています。その他にも、商売繁盛や五穀豊穣の神である恵比寿様の小像も祀られており、境内を巡れば様々な神仏に出会えるのも魅力の一つです。

    鐘楼堂も設けられており、大晦日には除夜の鐘が撞かれて一年の無病息災が祈られます。境内奥には小さな屋敷山稲荷社もあり、朱塗りの鳥居の先で狐が祀られていて、地域の人々に親しまれています。 太春寺の庭園や周囲の景観も訪れる人の心を和ませてくれます。箕面の丘陵地に位置するため境内は緑に囲まれており、静かで落ち着いた環境です。春には桜やツツジが彩りを添え、初夏の新緑や秋の紅葉も美しく境内を染め上げます。

    特に秋は箕面エリア全体が紅葉の名所となるため、寺院周辺でも色鮮やかな秋景色を楽しむことができます。冬の終わり頃には八重の水仙が可憐な花を咲かせる姿も見られ、ひっそりとした冬枯れの庭に彩りを与えています。四季折々の自然に包まれた境内は散策するだけでも心癒される空間であり、歴史的建造物とあわせて季節の風情も堪能できるでしょう。

太春寺のあゆみ

  • 1579年
    (天正7年)

    太春寺の創建

    北摂の領主から寺領と山林地を与えられ、現在の箕面市如意谷に太春寺を創建。以後、曹洞宗寺院として永平寺・總持寺の両本山の法脈に連なり発展。初代住職は永平寺の流れを汲む僧と伝えられる。

  • 18世紀頃
    (江戸時代)

    豪商・銭屋惣兵衛の菩提寺となる

    大坂の豪商・銭屋惣兵衛の菩提寺となり、境内に惣兵衛の墓が建立される。また、当地の豪族・如意谷氏一門の位牌も堂内に祀られ、地域の篤い信仰を集める。

  • 近代以降

    寺域の整備と高台への移転

    時勢の変化に伴い寺域の整備や移転が行われ、現在地である如意谷の高台に境内を構えるようになる。廃仏毀釈や戦災の影響を受けず、堂宇や寺宝は良好な状態で維持された。

  • 20世紀末〜現代
    (平成以降)

    ペット供養や永代納骨の新しい取り組み

    放生観音像を境内に安置し、ペットや動物の供養にも力を入れるようになる。これにより「ペットの寺」「猫寺」としても知られるようになり、動物愛好者からの参拝が増加。併せて、現代社会に対応した永代供養墓「天照苑」「寂照苑」などを整備し、檀家でなくとも利用できる納骨堂を設置するなど新しい取り組みも進められている。

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