所在地 | 大阪府池田市井口堂1-4-17 |
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TEL | 0727618743 |
宗派 | 曹洞宗 |
本尊 | 釈迦如来 |
創建 | 江戸時代中期(元禄年間) |
十王寺(じゅうおうじ)は、大阪府池田市井口堂1丁目にある曹洞宗の仏教寺院です。寺号の「十王」とは、仏教で人が亡くなった後に生前の罪を地獄の十人の王(閻魔大王を含む)によって裁かれるという思想に由来します。江戸時代に創建された歴史を持ち、現在は主に地域住民の菩提寺(檀那寺)として機能しています。寺の本尊は釈迦如来で、本堂には釈迦牟尼仏像が安置されており、寺宝として釈迦八相図(釈迦の生涯八場面を描いた絵巻物)を所蔵していることでも知られます。観光寺院ではなく境内はこぢんまりとしていますが、地域の歴史と信仰を伝える寺院です。
十王寺の本堂は寺域の中央に位置する正堂で、寺の本尊である釈迦如来像を安置しています。現在の本堂は平成10年(1998年)に再建されたもので、鉄筋コンクリート構造ながら伝統的な寺院建築様式を取り入れて造られています。正面に向拝を設け、瓦葺の屋根を持つ外観は、一見すると近代的な再建建物であることを感じさせない落ち着いた佇まいです。内部には本尊の釈迦如来坐像が安置され、欄間や柱などには古い本堂から引き継がれた意匠も一部に活かされており、往時の面影を伝えています。広間となっている本堂内陣では、年中行事の法要や檀家の葬儀・法事が執り行われ、地域の信仰の中心となっています。
本堂前方に構える山門(さんもん)は、十王寺の正門にあたる建築物です。規模は大きくありませんが、切妻造の小堂形式で瓦葺の屋根を持ち、伝統的な木造建築で建立されています。門柱には歴史を感じさせる風合いがあり、門扁額には「十王寺」と寺号が掲げられています。山門は寺院の境内と外界とを隔てる結界としての役割を果たし、この門をくぐると石畳の参道が本堂へと延びています。震災時には門も一部破損しましたが、本堂再建の際に修復され、現在も往時と変わらぬ姿で参拝者を迎えています。
十王寺の本尊は釈迦如来坐像で、本堂内陣の須弥壇中央に安置されています。現在の本尊仏は江戸時代後期の作と伝わり、穏やかな表情で禅寺の本尊らしい端正な像容を備えています。両脇には脇侍として地蔵菩薩立像などが安置され、これらは先祖供養や法要の際に併せて礼拝されています。また、本堂には寺宝として「釈迦八相図」と呼ばれる絵画が伝わります。これは釈迦の一生における8つの重要な場面(誕生、出家、成道、初転法輪、涅槃など)を描いたもので、彩色を施した紙本の掛け軸絵画です。江戸時代に制作されたとみられ、池田市内に現存する仏教絵画として貴重なものです。この八相図は平時には寺内に大切に保管され、法要や仏教行事の際に開帳(公開)されることがあります。十王寺という寺名から連想される閻魔大王をはじめとする「十王」の像や絵については、現在では本堂に明確な遺品はありませんが、寺伝ではかつて十王堂があって地獄の十王像を祀り、追善供養に用いていたともいわれます。しかし現代の十王寺では、本尊釈迦如来と地蔵菩薩を中心とした安穏な信仰空間が保たれており、地域住民の心の拠り所となっています。
1690年
(元禄3年)
江戸時代中期の元禄年間に創建。寺伝によれば、池田城主・池田氏の菩提寺であった大広寺の僧が当地に草庵を結び、十王寺を開いたと伝えられる。当初より井口堂村の檀信徒のための寺院として機能した。
1975年
(昭和50年)
江戸時代から伝わる寺宝の絵画「釈迦八相図」の老朽化が進んだため、この年に池田市教育委員会の指導のもとで表装の修復が行われた。絹本著色の本画は色彩の補修と軸装の仕立て直しが施され、以後は寺で大切に保管されている。
1995年
(平成7年)
1月17日の阪神・淡路大震災で大阪北部の池田市も震度6強の揺れに見舞われ、十王寺でも本堂が倒壊するなど甚大な被害を受けた。幸い本尊像や寺宝は無事だったが、堂宇は使用不能となり、以後数年間にわたり仮堂で法要が営まれた。
1998年
(平成10年)
震災から3年後、新しい本堂が落成した。再建された本堂は鉄筋コンクリート造ながら入母屋造瓦葺(いりもやづくり・かわらぶき)風の外観で、旧来の本堂の意匠を踏襲している。これにより震災で中断していた年中行事や法要も平常通り再開され、寺院機能が完全に復旧した。