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信行寺しんぎょうじ

天正元年創建、顕如上人の弟子・慈渓が開いた浄土真宗本願寺派の古刹

所在地 大阪府豊中市立花町2-3-31
山号 大塚山(おおつかやま)
宗派 浄土真宗本願寺派(西本願寺)
本尊 阿弥陀如来(木造坐像)
創建 天正元年(1573年)
開基 慈渓(じけい)上人(新免村出身、顕如上人の直弟子)
拝観 境内自由(本堂内の参拝は行事時のみ)

戦国の乱世を経て地域信仰と教育を支え続け、今も豊中に法灯を伝える大塚山 信行寺

信行寺(しんぎょうじ)は、大阪府豊中市にある浄土真宗本願寺派(西本願寺)の寺院で、16世紀後期(戦国時代)に創建された古刹である。 山号を「大塚山(おおつかやま)」と号し、本尊には阿弥陀如来像を安置する。 創建から約450年の歴史を有し、地域の門信徒を中心に厚い信仰を集めてきた。 寺号「信行」は、仏教における「信(しん)=信心」と「行(ぎょう)=実践」を意味し、浄土真宗の教えを象徴している。

寺は豊中駅から徒歩圏の住宅街に位置し、華美さはないが落ち着いた雰囲気を漂わせる。 門前からは本堂や伽藍を望むことができ、地域に根ざした静かな信仰の場として親しまれている。 境内は常時開放されており、自由に散策・参拝が可能(拝観無料)。 本堂内部は通常非公開だが、法要や行事の際には参拝することができる。 観光寺院というよりも、地域の生活や歴史と共に歩んできた「豊中の信仰の寺」として、その穏やかな佇まいの中に古き良き寺院文化が息づいている。

  • 山門

    正面に構える山門はシンプルな木造構造で、門柱には寺号「信行寺」の額が掲げられている。 山門をくぐると石畳の参道が真っすぐ伸び、その先に入母屋造瓦葺きの本堂が堂々と建つ。 伝統的な真宗寺院の構えでありながら、どこか親しみやすい佇まいが印象的である。

  • 本堂

    木造平屋建て・入母屋造瓦葺きの本堂は、西本願寺の建築様式を踏襲した荘重な意匠。 正面には軒唐破風の向拝があり、堂内には黄金に輝く阿弥陀如来像が安置されている。 手前の石灯籠や手水鉢が配置され、簡素ながらも清らかな参拝空間を形成している。

  • 庫裡(くり)・附属建物

    本堂の脇には庫裡が併設され、住職や寺族の日常生活の場であり、法要準備や寺務を行う中心でもある。 境内の一角には信行寺の由緒や歴史を記した石碑や案内板があり、寺の歩みを学ぶことができる。

  • 墓地

    境内裏手には寺院墓地が広がり、代々の門徒や地域住民の墓碑が整然と並ぶ。 お盆や彼岸の時期には多くの参詣者が訪れ、先祖供養が行われる。 信行寺が地域における精神的な拠り所であり続けていることを示している。

  • 季節の景観

    春には境内の木々に新緑が芽吹き、初夏には門前の街路樹が瑞々しい緑で彩られる。 秋には紅葉が本堂の白壁と瓦屋根に映え、冬には静寂の中で六甲の山並みを遠望できる。 四季を通じて変化する自然の風景が、歴史ある寺院の風格と安らぎを際立たせている。

信行寺のあゆみ

  • 1573年(天正元年)

    信行寺の創建

    顕如上人の直弟子である慈渓(じけい)によって開山。新免村の茂幾吉右衛門の弟であり、石山合戦の時代に本願寺門徒として当地に道場を建立したのが始まりとされる。

  • 江戸時代

    地域信仰の中心として発展

    豊前から摂津にかけて門徒を有し、本願寺(西本願寺)を本山とする寺院として信仰を集める。 寺子屋的な役割を担い、歴代住職の法灯が受け継がれていった。

  • 1874年(明治7年)

    教育の場としての利用

    学制発布に伴い、信行寺が仮校舎として使用され「豊中村第六番小学校」(現・豊中市立克明小学校)が開校。 寺子屋から近代学校への転用が行われ、地域教育に大きく貢献した。

  • 1881年(明治14年)

    仮校舎の役割を終える

    第六番小学校が統合・移転され、仮校舎としての役割を終了。以後、信行寺は宗教活動に専念する寺院空間として再整備された。

  • 1944年(昭和19年)

    西光万吉との交流

    部落解放運動の指導者・西光万吉が門徒を頼り訪問。寺に集った人々と夜を徹して対話を行ったと伝わる。 戦時中においても人々の交流・対話の場として社会的役割を果たした。

  • 1945年(昭和20年)

    大阪空襲と戦後の復興

    大阪空襲により豊中地域が被害を受けるが、信行寺の本堂や伽藍は焼失を免れる。 終戦後は地域復興の精神的支柱として再び信仰の中心となった。

  • 1973年(昭和48年)

    創建400年記念

    創建400年を迎え、本堂や庫裡の改修が実施される。記念法要や寺史の編纂などが行われ、近代的設備を整備しながら伝統を継承した。

  • 2023年(令和5年)

    創建450年を迎える

    創建から約450年。報恩講や盂蘭盆会などの年中行事を継続し、地域とともに歩む寺院として活動を続けている。 現住職・岩田仁師のもと、浄土真宗の教えを現代に伝え、寺の伝統と信仰を未来へとつなげている。

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