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万福寺まんぷくじ

江戸時代に開創され、地域に根ざした浄土真宗本願寺派の寺院

所在地 大阪府吹田市千里山松が丘23-10
TEL 06-6388-9538
宗派 浄土真宗本願寺派(西本願寺)
本尊 阿弥陀如来
創建 江戸時代(創建年不詳)
文化財 木造観世音菩薩立像・多聞天立像・持国天立像(平安時代作、市指定有形文化財)、
木造阿弥陀如来座像(市指定有形文化財)を所蔵

大黒天信仰や平安古仏を伝え、大阪万博での「地獄に仏」逸話とともに慈悲深い寺院として親しまれている

万福寺は江戸時代に開かれ、浄土真宗の寺院でありながら福徳の神である大黒天を祀っている点が特徴です。商売繁盛や五穀豊穣を願う人々の信仰を集め、地域の中心的存在となってきました。寺号の「万福」には「多くの福徳」という意味が込められており、地元では「この界隈では有名な万福寺」と評されるほど広く知られています。

境内には伝統的な伽藍が整い、本堂には本尊の阿弥陀如来像が安置されています。落ち着いた雰囲気の本堂内は、参拝者に静謐な祈りの空間を提供しています。本堂脇には江戸時代以来の大黒天像が祀られ、開運招福を願う参拝者で賑わいます。春には桜、秋には紅葉と四季の彩りが境内を包み、季節の風情を楽しむことができます。 また、万福寺は平安時代の木造観音菩薩立像や四天王像(持国天・多聞天)を所蔵しており、吹田市指定文化財に登録されています。これらは前身寺院から受け継がれた仏教美術の貴重な遺品であり、信仰と歴史を今に伝える存在です。

万福寺では毎年大晦日に「除夜の鐘」が行われ、地域の人々が集まり108つの鐘を撞いて新年を迎えます。その際には甘酒が振る舞われ、家族連れや学生など多くの人々で賑わいます。正月には御礼参りや初詣も行われ、春秋のお彼岸法要や親鸞聖人の命日にあたる報恩講などの年中行事も続けられています。法要では住職による法話も行われ、参拝者が仏教文化に触れる貴重な機会となっています。

  • 本堂

    浄土真宗寺院らしい木造瓦葺きの本堂で、内陣中央に本尊・阿弥陀如来像を安置しています。 須弥壇には西本願寺派の伝統的な装飾が施され、誰でも自由に参拝が可能です。 法要の際には多くの門徒が集い、厳かな雰囲気の中で勤行が行われます。

  • 山門

    境内入口に立つ一間一戸の山門はシンプルな造りながら、門柱や梁に経年の風格が感じられます。 普段は開放されており、地域の人々が気軽に境内を訪れることができます。門をくぐると正面に本堂、左手に寺務所兼庫裏が見えます。

  • 大黒天像

    本堂の一角に祀られている大黒天は、万福寺創建以来の守護尊です。 打出の小槌を手に福袋を背負い、にこやかな表情を浮かべた姿は親しみやすく、商売繁盛・五穀豊穣の神様として信仰されています。 地元商店関係者がお参りに訪れる姿も見られます。

  • 古仏像(観音菩薩・四天王)

    本堂に安置または収蔵庫に保管されている平安時代の仏像群で、吹田市の有形文化財に指定されています。 観音菩薩立像は優美な姿で、四天王(持国天・多聞天)は甲冑をまとった勇ましい姿をしています。 木彫彩色の古仏は歴史的価値と造形美を兼ね備えており、文化財特別公開の機会には拝観できる可能性があります。

  • 鐘楼

    境内奥に鐘楼堂があり、大晦日の夜には除夜の鐘が撞かれます。 比較的新しい建築ですが、大きな梵鐘は深みのある音を響かせ、静かな住宅街に一年の締めくくりを告げています。

万福寺のあゆみ

  • 江戸時代

    開創

    万福寺が開創。元は天台宗系の寺院から転じて浄土真宗本願寺派の寺院となったと伝えられる(詳細な創建年不詳)。以降、千里山村の浄土真宗道場として地域住民の信仰を集める。

  • 明治・大正時代

    近代化の中での存続

    廃仏毀釈や近代化の中でも寺院は存続。千里山周辺の集落の氏寺的存在として機能し、大正期には鉄道開通により宅地化が進み、門徒も増加する。

  • 1970年
    (昭和45年)

    大阪万博と高校生の宿泊

    日本万国博覧会開催時、当時の住職が訪れた高校生たちを「他で断られたのなら泊めてあげましょう」と宿泊所として受け入れる。困っていた若者たちを助けたこの心温まる逸話は「地獄に仏」と称えられ、万福寺の慈悲深さを物語るエピソードとして語り継がれる。

  • 平成~令和時代

    現代の万福寺

    現在も地域に開かれた寺として、法要や行事を通じて仏の教えを伝えている。大晦日の除夜の鐘には多くの参拝者が訪れ、地元の恒例行事として定着。令和に入っても寺の佇まいは変わらず、千里山の歴史を今に伝える存在として守られている。

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